涌井 学氏の児童向けノンフィクション『いっしょにいるよ:子どもと裁判に出た犬 フランとハッシュの物語』を読みました。虐待を受けた子供が出廷する際に、その心理的負担を和らげる為の付き添い犬を題材とした作品で、作中では身体的虐待のみならず、(一応、児童書ですが)性的虐待というかなり激辛なケースも取り上げられています。
こういう所から、本作はその他多くの作品のように、可愛らしい犬と被虐待児の交流を可愛らしく描くようなモフモフ癒し系ではなく、主人公の弁護士や被虐待児の憤怒が赤裸々に綴られていて、どうすれば子供が守られるべきなのか、子供を傷つけた相手に(法的に)しかるべき報いを与えるには何が必要か、法律や制度という縛りの中で奔走する大人達の葛藤を通じ、ただ可愛い動物(敢えて書きますが、「天才!志村どうぶつ園」的な演出に甘んじた)だけの強調に留まらない訴えを感じました。
本書を読んで、やっぱり裁判というのは子供でも大人でも容赦なく対価に扱われるもので、わかりやすい悪徳弁護士やカタルシスのある結末なんて存在しません。相手も仕事の一環として、勝つつもりで準備をしているので、性的虐待を受けた子供が加害者側の弁護士に、琴線をぶっ叩かれるような質問をされる事だってあるわけです。だからこそ、私は最近話題になっている、『ともだち弁護士リッカ!』(こちらでも感想を書きました)みたいな作品を美談にするのはどうかいう確信が、更に沸きました。
裁判で付添犬が必要とされるような事態が物語っているように、裁判は半端な手助けや思いやりが目的で行われるものではありません。その辺りの誇張されたカタルシスより、職業的な信用と責任を持った大人達が、法の平等に晒された子供をどう守っていくかを地道に追った現実の方が、余程現実味が感じられると思うのです・・・。