去年、『多摩川ヒルズ族の妄想な日常』という小説が出版された。
内容は、貧困家庭の子供たちやその親、生活保護受給者やホームレスが意図的にそうした生活を営んでいるものとして、面白おかしくギャグを交えて描いたもので、この間はドラマ化もされていた。要するに、そうした生活を実際に見ていない人間にとって、私たちは「下流生活を送るクズ人間の集まり」で「普通の小説とケータイ小説の違いもわからないおサル」らしい。著者の公式サイトでも、こうした見解はむしろ、社会問題を理解する上でのユーモアだと公言していた。
「社会問題を理解するにはユーモアが必要です。社会のお荷物とされる彼らにも、我々普通の人間が持っていないユニークな一面があると思ったのが、本作の執筆の動機です」
この十三年の間、私たちはこうした人間にいわれるがままに甘んじていた。でも、今では彼らが何をいっているのかわからせる力を手に入れている。