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2025年7月24日木曜日

『ズッコケ文化祭事件』を読みました。

 恥ずかしながら・・・私は児童書が好きでも、全ての児童書を網羅しているわけじゃありません・・・ジェンダー的な話になってすみませんが、男の子向けのメガヒット、或いはロングセラーみたいな作品とは本当に相性が悪いんだな・・・と感じたりしています・・・。だから小学生から高校生の時は、角野栄子氏の『小さなおばけ』シリーズや、上崎美恵子氏の『おしゃれおばけの小さなデート』、あんびるやすこ氏の『なんでも魔女商会』シリーズみたいなものが好きで、逆に原 ゆたか氏の『かいけつゾロリ』とか、今から取り扱う那須 正幹氏の『ズッコケ3人組』シリーズは殆ど読んでいなかったというか・・・(泣)
でも、何か作家の思ってることと現実が違うみたいな話に興味を持って、シリーズの一つである『ズッコケ文化祭事件』を読んでみました。

まぁ・・・何か童話作家の新谷さんのいい分も理解できるんですよね・・・正直・・・。実際に、新谷さんの言動を見てると、作者である那須氏の児童書における理想と現実におけるジレンマが、かなり生々しく書かれてると思います。ラストでの、宅和先生の口論も含めて。
風刺的な業界ものを書く際、新谷さんのような何の力もない癖に、一匹狼ぶって甘い理想に拘泥し、歪んだプライドを振りかざすクリエイターは、その藁人形として重宝されがちですが、新谷さんの姿勢はあながち間違ってないような気がするんです。ただ、幼稚園~低学年向けの台本を中~高学年向けの文化祭への演劇に提出したという、対象年齢を間違えたことを犯したというだけであって・・・。例えるなら、離乳食を小学校の給食に提供した。そんな感じかな・・・?
それに、これは私見であり、一部は神宮 輝夫氏の『現代日本の児童文学』の受け売りになりますが、子供ってドライで残酷な部分だけじゃなく、未熟な分ナイーブで不器用な優しさを持っているのだと思います。『ズッコケ文化祭事件』では売れない作家の現実逃避としてそうした観点が皮肉られていましたが、尖った時事ネタや攻撃性、皮肉だけが子供のイマジネーションでないし、これから社会を生きていく子供に対する一定のガイドラインとして、託す理想だってあるべきでしょう。だからこそ刺激的な面白さと併せて、(私が最初に書いたように)ゆったりとした母性に基づく優しい作品だって、価値があるはずです。
そして・・・これって余計な事かもしれませんが、新谷さんはノーギャラで台本の執筆を引き受けていましたが、これは作家としてヤバい態度だと思うんですよ。ボランティアはともかく、基本的に子供だからといって金銭的責任が生じる仕事を無料で引き受けるということは、相手からお金の大切さを学ぶことを奪ってしまい、双方が損をすると思うんです。だから、新谷さんはちゃんと原稿料を請求すべきだったと考えます・・・。