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2025年10月24日金曜日

『ノスタルジアは世界を滅ぼすのか』を読みました

一時バイト先の近くにあるコンビニで、『昭和40年男』なる雑誌をちょくちょく目にしていました。まぁ・・・多くの人にとっては(私も含め)子供時代の方が・・・という感じでしょうが、それは大人になってからある程度はやるべき義務とか責任とかを、親を筆頭とした多くの大人が肩代わりしてくれた運の良さというべき事かもしれません。私だって古いものを見ると思わずエモさを感じてしまいますし。

で・・・そこら辺のアレコレを見事に論じている本を見つけました。タイトルにある通り、アグネス・アーノルド=フォスター氏の『ノスタルジアは世界を滅ぼすのか』です。

内容は「昔はよかった」とか「懐かしさ」といった感情が、過去が現在より有していた悲惨さをごまかし、右派・左派問わず政治家の政策における武器化やコンテンツの金儲けにも繋がっている事が指摘されています。ですが、私が本書が良書だと感じたのは、著者が一方的にノスタルジアを敵視し、自身の知力や地位、そして倫理を総動員してノスタルジアに加担するアマチュア歴史家や過去を懐かしむ人々をボコるような書き方をしていない事です。寧ろ、ノスタルジアにはポジティブな側面がある事を理解し、中立的なスタンスでお付き合いしていくようなタッチには好感を覚えました。

(個人的な偏見で恐縮ながら)どうもアメリカのこうした一部の評論というのは、相手をデータや理論で殴って「お前は間違ってるから黙っとけ」といい放つようなものがちょくちょくある中、批判対象である相手の立場を尊重して理解するという人がいるという事に、安心感を覚えています。

確かに、(「オトナ帝国の逆襲」でも風刺されてましたよね)「昔は良かった」という感情が誤謬のもと間違った美化として本書の指摘通り、政治や※1社会問題などにおいて力を持つ事があり、それはきちんと批判されるべきです。 ですが、※2過去がある程度は今よりマシだったという事も事実であるし、カウンタックや国電、そしてトーマスなどが未だに人を惹きつける力自体はアリだと思うのです。私もレトロゲームの実況動画を見てニヤけとることはあるし、絵だって一昔前の乗り物から一定の影響を受け取るし、(ストック・エイトキン・ウォーターマンに代表されるような)ハイエナジーサウンドとか好きだしなぁ・・・。

 

※1例えば、「少年犯罪は現在、凶悪化・増加の一途を辿っている」とか、当時の公害や差別・治安問題を抜きにして「今の若者は可哀想だ」というようなトンデモ理論でしょうか・・・。 小さいものでいえば「#今の小学生は知らない」というプチ権威主義・・・でしょうかね・・・。

※2だからといって、今の時代が絶対善かといえばそうでもない気がします。情報化で社会の利便性は格段に高まりましたが、その高度さは特定の年齢層への分断を煽り、何かあれば(原発事故や、スマホなどの電子機器が無ければ機能しないサービスのように)一発で崩壊するというリスクを格段に孕んでいると思うのです・・・。「クロムハウンズ」というゲームでも、太陽フレアの異常活動で電子機器が殆ど使えなくなった(だから、飛行機を飛ばせないしミサイルも使えない)という、悪夢のような近未来世界でしたよね・・・。