中学生の時、私は地元の美大が主催する公募で、銀賞を受賞したことがある。
だが、当時所属していた部長が、他の部員たちにこう話していたのを聞いてしまった。
「神崎さんって、大した実力もないのに銀賞っておかしくない?もしかして、三眼症を利用してうまく立ち回ったのかもしんないし」
「そうそう、俺たちは三眼症ですらないから、もっと努力しなきゃいけないのに。まじで神崎が羨ましいわ」
こうして、私の通う中学校の美術部には「実力ではなく、三眼症を利用して銀賞をとった狡賢いアーティスト」が誕生し、私は毎日そういう言葉で揶揄され続けた。
そして今、私は「これまでされてきたことノート」をずっと書き続けている。あともう少しでこのノートは完成し、そうすれば、もう私は誰かのための小賢しい人間ではなくなり、神崎櫻子という生徒が、実力ではなく三眼症を利用して便宜を図ったという世界に逃げ込んだ、彼らの世界を完膚なきまで破壊するチャンスを得られるはずだ。いや、必ず自分の人生のためにも、そうしてみせる。