コーニー星の超大国、ブラウンアイとドローヴの間で行われていた、10年にもわたる戦争「大戦」は、ブラウンアイが秘密裏に開発していたロボット兵器「ダハク」の投入と都市部への無差別攻撃により、ドローヴはブラウンアイに無条件降伏した。
そしてドローヴの敗戦から100年たつが、ダハクの無差別攻撃の実態は当時からずっと語り継がれており、ドローヴにはそのことを扱った映画や小説も沢山ある。
戦後生まれの私も、学校で何度も先生や平和教育の一環として招待された戦争経験者の話から、ダハクについては何度も聞かされていた。
だが、ドローヴが大戦の時、領土を拡大するために南方にある大陸リバルスを侵略し、特にべリオル諸島の原住民を虐殺したという事実は、ダハクの被害の影にすっかり隠れている。
それを知ったのは、私の大学にべリオル諸島からの留学生が来た時だった。彼女は私にドローヴがダハクで攻撃を受けたのは、自業自得だといった。私はおどろいて彼女にいった。
「何でそんなこというの?この国では沢山の人が死んでるんだよ!?」
彼女は私を冷たく見すえていった。
「じゃあ、大戦でドローヴの兵士たちが私たちのおじいちゃんやおばあちゃんを、『緑髪のサル』と呼んで面白半分に殺していったことはどうでもいいんだ?リバルスでだって、そういうことをしていたよね?今じゃその虐殺をでっちあげだっていう人もいるみたいだけど」
私はその時、今まで信じてきたドローヴの戦後の姿が、砂上の楼閣のように崩れ去っていくような感じがしていた。