最近読んだ戦時中の食生活を扱ったグルメ漫画で、日本統治下で近代化が進み、現地住民に今でも感謝されているという加害の矮小化と正当化に近い描写が行われていたのを思い出しながら、戦後の東京の闇市を舞台にした児童書『灰とダイヤモンド』を読みました。
なんか宣伝とかXのレビュー等を見た上で読んだのですが、この小説はただ登場人物を「かわいそうな被害者」として描き、あやふやな「戦争の悲惨さ」として語るような事をしていません。日本をちゃんとアメリカと同じ「戦争加害国」として、その責任追及ともいえる描写が数多くあり、今まで(東京大空襲に代表されるような)無差別爆撃や原爆投下において、中韓を始めとした周辺アジア諸国に対しての蛮行を「免罪符」にしているような作品がある中で、『灰とダイヤモンド』は日本をきちんと戦争加害国として描いた数少ない児童書だと思いました。私の住む広島でも原爆投下後のポスト8・6ばかりが語られがちですが、その前を辿ると、(今は無き国鉄宇品線や大本営の設置を見るにあたり)戦争加害の一翼を担っていた歴史があるわけです。
しかも、その書き方も主人公サイドが(よくある反戦もののように)「無垢な市民を騙した権力者が悪い」という様な逃げも許していないので、著者の戦禍に対する誠実な視線を感じました。
そしてラストに「殺す側」に関与してしまった主人公の決意が描かれていますが、戦争加害者だけではなく、家族が事件を起こしたり、広陵高校のように自分が通う学校が重大な不祥事を起こしたりと、主人公のような環境に晒されてしまう子供達はいるわけです。加害がテーマである故に、過去の話だけではなく、現在の問題にも刃が突きつけられているように思えました。