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2025年9月1日月曜日

『あなただけの物語のために』を読みました

 最近、岩波ジュニアスタートブックやちくまQブックスなど、ミニサイズの入門書が次々刊行されていますが、後者のレーベルから発行されている『あなただけの物語のために』を読みました。著者は『NO.6』や『バッテリー』等を書かれているあさのあつこ氏という事で、児童書繋がりでちょっと興味が湧いて読んでみました。そこで一番印象に残ったのが「紛い物の物語」(100P)という言葉でしょうか。

石田 衣良氏も短編集『約束』の中で同じような事を書いていたと思いますが、「耳障りがよくて、美しくて、あなたの全てをわかると言い、あなたはこうするべきだと諭す。そして、絶望して当然だと囁く。あなたの絶望を知りもしないし、知ろうともしないくせに、偽物の共感だけを垂れ流してくる。」(100~101P)という書中の言葉は、最近社会派といわれるフィクション(特に漫画とか小説とか)でも、ただこれ見よがしに実態を振りかざし、作者が社会的弱者をダシにして露悪に酔っているだけの作品が散見される中、一定の正当性があるなと思いました。

 こうした「絶望」には他人事としての格差や貧困、そして虐待や震災等が入りやすい(と感じる)ですが、やっぱり自分を「他者の語る絶望」からコントロールする事も必要だし、それは逃げだと責められがちですが、安直な逃避や甘さではないという事を認識しています・・・。