吉野 万理子氏の児童書『花に風』を読みました。今時、貧困とか闇バイトとか、本作のようにハラスメントとか・・・世知辛さの波にうまく乗る児童書はいつの世でもありますが、「想像の世界でくらい自由にさせてあげなよ・・・」とか思いますが、知らんぷりもどうかと思う次第です。
で、何か本作でテーマになっているのは、最初に書いた通り「ハラスメント」です。パワハラとかカスハラとかスクハラが出てくるんですけど、知らず知らずの内に主人公の家族もカスハラ認定される事により、ハラスメントというものを、自分とは関係ない異常な大人同士のイザコザで片さない誠実さを感じました。
そこで、主人公の少女が生け花教室の先輩から・・・そう、アドバイスのフリをした・・・アレを受けるわけですが・・・。アレとはもちろん、主人公が気づいたあの言葉、「スクハラ」ですよ・・・。で、相手の実力や立場の誇示の受け皿にされる主人公を見ながら、(結構場違いかつ極端な例えを持ってくるようですが)殺人事件という最悪な事例に至る事は滅多にないですが、川名 壮志氏のノンフィクション『謝るなら、いつでおいで』で被害者の少女が直面していたような、創作界隈のギスギスはどこにでも転がっている普遍性がある・・・そんな感じがしました。
先輩から主人公が受ける、「アドバイス」という名前のそれですが、インターネット(特にX)を検索していて、そういうのってかなり見ます。よー清水氏も指摘していたと思いますが、厳しいアドバイスのフリをしながら、他者を自分の自己顕示欲や支配欲のはけ口にして、侮辱するような言動をする創作者みたいな・・・。その場合はターゲットが不特定多数なんで、マジで何ともしがたいよな・・・と感じています。自分の仕事にアート(或いは芸術)という冠がついた瞬間、そんな自分を特別視して排他的な選民思想を表明し、自分が勝てる相手に威張り散らすような画家やギャラリー経営者をXやBluesky上で見とるんでね・・・。
そして、(いささかネタバレになってしまいますが)最後に主人公がスクハラの加害者に下した決断は、とても現実的だと思いました。そこで相手も反省して仲直り・・・になると、ハラスメントがなぜ悪であり、やってはいけない行為なのか・・・という教訓の効用が薄れてしまいますからね・・・。