「(前略)まともに扱ってもらうこと。社会があるって大事でしょ?」
―カズオ・イシグロ『クララとお日さま』より
今、雪森 寧々先生の漫画『久保さんは僕を許さない』を読んでいます。
まぁ・・・『おさななななじみ』から雪森先生を知ったし、まだアニメ版も観ていないので所詮はミーハー的なもので感想・・・という事はお許しください・・・。
で、『久保さんは僕を許さない』のストーリーなんですが、主人公の白石 純太はかなり影が薄く、人には気づいて貰えない存在なんですが、クラスメイトの久保 渚咲はきっちり彼を見つける事ができ、そこから色々純太の周りでも人との関りができていき・・・というラブコメなんですよね。
こうした、「クラスで浮いている奴がちょっとしたきっかけで、他者と繋がって幸せになっていく」という系のラブコメ漫画や美少女ゲーム(例:『僕の心のヤバいやつ』とか『事情を知らない転校生がグイグイくる。』みたいな)はちらほらと見かけますが、中には考えもせずに純太のようなキャラを不快で迷惑な存在として描き、職場や学校に蔓延るいじめやイジりの文脈で矯正していくような作品もある中、孤立していた子供をどう救済していくか?という、作者の思いやりが感じられました。
上に書いた、いじめとかイジりの文脈ですが、実際にこうした所から(少し前の話ですが)神戸で教員がハラスメントを受けるような事件があったりするわけで、その辺の仕草と地続きの漫画は結構見かけます。ドンくさい奴はいくらでも集団心理で叩いても構わない・・・みたいな・・・。 ですが、本作は「許さない」というタイトルにあるように、それを許していません。あるっちゃあるんですが、そんな悪意や差別をメインとした作品じゃないし・・・。
寧ろ、そんな人間も人権を尊重され、公平に扱われて当たり前じゃないかという理念のもと、ストーリーが進行するので安心して読む事ができました。
人は本質的に、100%孤立して生きていけるわけではありません。個人主義の時代とはいいますが、どこかで他者への敬意やマナー、コミュニケーションは絶対に発生しますし、それらへの尊重があってこそ、人は人足り得るのだと思います。
ですが、そうじゃない人にヘイトを向けるのも間違っていると思います。『久保さんは僕を許さない』は、『コミュ症』とか『ぼっち』みたいな一括りで矮小化されている個人が、相手から人間扱いされる事により「しょうがない」から脱出していく自立の物語ともいえます。私もこれだけ扱われて純太は何故怒らないのかと感じた事がちょくちょくありましたし・・・。個人的に、掌返しですが写真合成の件は、『ワンダー』という児童書で顔面に重度の障害を持つ主人公の写真を、(いじめの加害者の母親が)フォトショで消す位の暴力性があったと思います・・・。