カテゴリ

2026年7月28日火曜日

『給食のおばちゃん:異国の友』を読みました

 これは1巻(すみません、そっちのレビューが書けてなくて)から読んでいるのですが、山口 恵以子氏の児童書『給食のおばちゃん:異国の友』を読みました。

管理栄養士の昼間 明子が全国の小学校を渡り歩き、ご当地の食材で子供達に魅力ある給食を提供し、そこに子供達が抱える問題が巧みにリンクしてくる・・・という内容なんですが、今回は、なんと私の地元である広島です。しかも、広島焼が出てきます。広島故に、多くの作品では(単なる)平和教育的な内容になってしまいがちな所に、サンフレッチェという広島の「今」を舞台に、移民がどのような問題に直面しているか、その課題解決にはどうすればいいかという話が、(こうした事を題材とした児童書が、陥りがちなワナですが)独り善がりの説教ではなく、読者をその捌け口にしないような描き方がされている事に好感を覚えました。

作中では、イスラム教では豚肉がNGという壁に、昼間がぶち当たりますが、同じように日本だって他国からこれまで同様の同情や配慮を受けてきたはずです。それを当たり前だと思い、日本は世界で一番愛されていると自惚れながら近隣諸国をディスる風潮がある今日、結構考えさせられるエピソードでした・・・これは・・・。

そして、次に印象深かったのは、福島県の郡山市を舞台にしたエピソードです。

一応、おさらいとして(皆が知っている通り)福島県は東日本大震災の被災地である事が書かれていますが、ストーリーの展開は震災と原発事故絡みではなく、今を生きる子供がみな感じるだろう悩みをベースにしており、ダイエットのために食べたものを吐き始めるシーンは、思わず、同様のテーマを扱ったスティーブン・レベンクロンの『鏡の中の少女』と『鏡の中の孤独』という小説を思い出しました。

広島のエピソードでも、昼間が平和記念公園を訪れるシーンが最低限書かれていますが、それをメインテーマにしなかった事に、山口氏の潔さを感じました。その辺りは福島のエピソードと同じように、作家と読者の間で必要以上のコンセンサスが得られやすく、結果として問題提起と告発だけが独り歩きしているような作品も見られます(故に、評価されやすい)が、敢えてそれに背を向けて普通の少女を描いた事は、震災や原発事故をちらつかせるよりも難しいし、だからこそストーリーとして成立している・・・と思いました。

ですが、ここは重箱の隅をつつくようですが、「昔は東京も網の目のように路面電車が走っていたものだが、今は都電荒川線、別名さくらトラム一本になってしまった。」(27P)という文章がありますが、実は・・・東急世田谷線はどうなんでしょう・・・とうっすら思いました・・・。ただ・・・荒川線と違って・・・世田谷線は併用軌道(一応、そういう形で道路を横断する区間がありますが)が無いからな・・・。