ずっと前に、『レイジ34フン』という、ロンドンの地下鉄を舞台にしたスプラッターホラー映画が公開されたことがありました。あの影響で地下鉄利用客が減少したとのことですが、地下鉄を舞台にしたもっと怖い作品を私は知っています。それが、『メトロ・ゴーラウンド』という児童書です。
レイジ34フンでは、終電が去った後の地下鉄駅構内で殺人鬼に追いかけられる恐怖が描かれていますが、メトロ・ゴーラウンドでは東京の地下鉄で失踪した友人を探すうちに、見知らぬ街に迷い込み、そこから脱出しないとどういうことになるのかという恐怖が、SF要素と共に描かれていました。
自分の体がどんどん別のものに変容していく事態がじわじわと描かれ、主人公が迷い込んだ街も、その具体的な場所も原因も説明されないまま、因果は巡ることを匂わせるラストは、大量の血しぶきや、精神に異常をきたした人間が人を惨殺していく演出よりも、もっと怖かったです。
個人的に血や殺人を絡めない話ほど、本当の恐怖が隠れている余地がすごくあると思うので・・・。