七都 にい氏の児童書『オレらは絶対だまらない:サイコーな毎日をとりもどせっ!』を読みました。まぁ・・・七都氏の代表作である『ふたごチャレンジ!』シリーズのDNAを引き継いだ問題提起系の話であり、久々のみらい文庫レーベルから出版された作品だったんで、新鮮味がありました・・・。七都氏のイラストといえば、もうしめ子氏の作品を長く見ていた事もあり、ちょっと視覚調整も必要でした(笑)
で、何か小学5年生になったばかりの札元 ダイヤや藤咲 マナカのクラスでは、担任の鷹野先生が考案した、「特別チャレンジ制度」が始まります。勉強や運動などを頑張り、ランキングに入れば特別チャレンジ券を鷹野先生から貰えるという決まりです。
全員が意気揚々と「チャレンジ」に挑む中、ランキングを巡ってクラス内では諍いが起き始め、しかも、成績がよかったりや運動が得意だったりしてもランキング外。しかも、ランキング上位にいる子供達が横暴な振る舞いを見せ始めます。
これは怪しいとダイヤ達は疑い、調査を始めますが、同時に「特別チャレンジ制度」の歪んだ事実が露わになり始め・・・というストーリーですが、私は(ここでも書いていますが)ランキングより、競争に対する私達の態度を問われているような重みがありました。
あらゆることが数値化し、インセンティブが叫ばれる中、鷹野先生がやっていたような事は世の中にあふれています。女子や浪人生だけを入試で不利に扱い、特定の受験生だけを優遇していた東京医大を始めとした医大群、フォルクスワーゲンの排ガス不正問題等、真面目に競争に参加している側からは指弾すべき事が多数あります。私だってズルをしていたかといえば「NO」なんて断言できませんし・・・。
それと、ランキング上にされた子のふるまいのようなものも、私は現実で結構見てる感じがします。自分の例でいえば、東京芸大卒で賞歴もかなりある作家さんがそうでない人を侮辱するような発言をしていたり、自分のキャリアを暴言を吐く形で誇示する作家さんなどなんですが、競争自体が問題なのではなく、そのプロセス(参加する側と主催者)が、それをベースとして運用される社会だからこそ、厳しい公正性と倫理的なものに立っていなければならないという思いが浮かびました。
だからこそ、(ここからはネタバレ恐縮ですが)鷹野先生だけを排除してめでたしにするのはどうかと思いました。これって、R・J・パラシオ氏の『ワンダー』でジュリアンを退学処分で済ませた事で反差別となす事のモヤモヤにも似てるんですよ。社会問題って、「善VS悪」みたいな単純明快なものじゃないです。お互いの行為の作用と責任を問わないと、正義としては片手落ちだと思うんです。
だからこそ、ダイヤ達が正義の味方として鷹野先生を成敗するというのは、社会問題の告発としては薄味に見え、多くの社会派児童書が陥っているワナを辿っているともいえました。これで子供ばかりに鷹野先生を糾弾させるのではなく、フラットな目線で問題を裁き、周りの大人のサポートが入っていれば、更によかったのに・・・と感じます・・・。
ところで、寧ろ、『ふたごチャレンジ!』で露骨な性差別やパワハラをしていた豆田校長が懲戒免職処分にならんのは不自然だなーと思いました。せっかく「ホワイト革命」までやったのに・・・。