名前はド忘れしましたが、いつか見たテレビ番組で、小学生の男の子がとあるローカル線の(本当の駅長さんの指示のもと)一日駅長をする様子を取り上げていました。そして、トイレ掃除をすることになるんですが、そこは(失礼ながら)ローカル線の性質上、衛生状況が悪い故、ゴキブリが這っていまして・・・。で、男の子はゴキブリを怖がり、駅長さんに退治をやってくれというのですが、駅長さんは「君がやりなさい」と毅然とした態度で促すのです。そうですよね、いままで駅長の仕事をやってたんだから、都合よくやりたくないことを任せたら・・・と駅長さんは思ったのでしょう。
で、この公開日記で何度か取り上げている『NO EASY DAY』にも同じようなことが書かれていました。主人公は特殊部隊の隊員で、CIAの分析官にいわれます。ビンラディンの遺体なんか見たくないと。で、主人公の隊員はこういうんですね。絶対に死体を見た方がいいと。確かに主人公はよくわかっていました。相手のポストは自分みたいな汚れ仕事ではない、ホワイトカラー的なものなので、死体をへりに運び込む必要がないことが。 でも、主人公の仲間は作戦が終わった後、分析官にビンラディンの死体を見せました。彼女は当然ショックで泣き始めます。
で、主人公は遺体を見た分析官を励まして褒めるんですよ。100パーセントだったなと。
(亡くなった人を批判的に書くのはかなり恐縮ですが)神宮 輝夫氏の『現代日本の児童文学』という評論集では、それなりに頷ける部分はあったものの、当時の社会に横たわる格差や職業差別を是認し、社会批判そのものを日和って冷笑するようなタッチ(一応、児童文学業界に携わるお仕事をされていながら!)に、ちょっと感じるものはありました。
で、以前も引用した文章なんですが、「職業、財産、生まれによる貴賤はなく、人間は協力し合うのが正しい姿であるといった考えは、だれしもその通りだと思うのだが、そうした美徳や正しい考えの大部分は、じっさいに効力を持っていない」という所に、今まではりきって駅の仕事をしていたのに、不快さは避けて通れないゴキブリ退治を大人に任そうとした男の子や、ビンラディンの遺体は見たくないと、特殊部隊の隊員にいい放ったCIA分析官の姿を思い出すんですよ、私は・・・。