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2023年7月2日日曜日

『ステイホーム』を読みました

 『ステイホーム』という児童書を読みました。

なんか部活や行事が無くなったから、悔しいと思ったり、そこから再開を目指して努力する人ばかり取り上げて、紋切り型の連帯や絆を押し付けてくるような話が多い今、そこで押しつぶされているマイノリティの叫びを上手く掬い取った作品だと思いました。

本作はただDIYでホンワカした生活を暖かいタッチで描くのではなく、職場や学校のギスギスした人間関係や、そこから生じる暗い感情の吐露などを時折痛烈に描いており、そうした辛みが胸にしみて、けっこういい塩梅になりました。特に、メディアではよく優秀(勉強ができる)だったり裕福な人間が性格がよろしくない悪役として描かれていますが、そうした逆差別で溜飲を下げるような表現に、本作は断固たるNOを突きつけています。

ですが、るるこちゃんの考えがそうだからといって、それを絶対だと考えてはいけないと思います。るるこちゃんが学校生活への呪詛を叫べたのも、運よくコロナに感染しておらず、親族にもそういう人がいたり、亡くなったりした人がいなかったからです。現在でも第9波の始まりだともいわれていて、沖縄は特に感染状況がシビアな状態です。後遺症で仕事や勉強ができなくなり、「死にたい」という人だっているわけです。

そういう所から、るるこちゃんが呪っていたものが、他の人にとってはかげがえのないものであり、だからこそ自殺したりする子だっていたでしょう。いや、絶対に存在したはずです。

(児童文学作家でもないのに、こんなこと書くなんてすごく恐縮ですが)児童書において新型コロナウイルスに向き合うということは、そうした二つの視点が必要だと思うのです・・・。